Twilight~救われた心~

8day:プロポーズ

家に帰ってきて、がちゃり、と鍵のかかる音が響いたかと思えば、背中は壁に押し付けらて、唇は、景虎さんのそれで塞がれていた。


どさっと、音を立てて、肩から鞄が落ちるのも構わずに、景虎さんの貪るようなそれに、必死に応えた。


「っは、……んっ」


口から洩れる声さえも、飲み込むように差し込まれる舌が、口内を蹂躙する。

荒々しい中に、労わるような優しさが垣間見えるのは、彼が、私の身体ではなく、心を切望しているようで、何だか涙が零れた。


「泣くな…」

「ごめんなさ……っん」


流れる涙を掬う彼の唇が、とても優しくて、温かくて、止めようとしても止まらない涙は、一体何を想って流れるそれなのか、私には分からなかった。


でも、景虎さんが、辛そうな顔して、私に口づけるその顔も見ていたくなくて、瞼を閉じて、ただ彼の甘い口づけが涙を止めてくれるのを待った。


どのくらいそうしていたのか、涙が止まった私を抱きしめたまま、玄関に座り込んだ景虎さんは、壁にもたれるようにして、私を抱えたまま、静かに口を開いた。


「もう、どこへも行くな」

「景虎さんの傍が私の居場所です」

「……ああ」


もう、どこへも行くな。
その言葉の響きは、とても切なくて。なんだか、一度、私が彼から離れて行ってしまったような言い方に、頭は理解できないと首をひねっているのに、心は、切なく疼いて、胸が苦しくて堪らなかった。

0
  • しおりをはさむ
  • 70
  • 238
/ 98ページ
このページを編集する