Twilight~救われた心~

10day:

「千歳、準備はいいか?」

「あ、待って!……これも、一応…!」


ずっしりと腕にかかる重みにぐっと眉間に皺が寄る。そんな私を玄関口で待っていた景虎さんは、一度はいた靴を脱ぐと、私の元まで歩み寄って、腕から重たいそれを取り上げた。

そして、それをそのまま私の部屋までもっていき、部屋に入れると、扉を閉めて私の元まで戻ってきた。

きょとん、と見上げれば、「行くぞ」と一言。


「え、え…っ!」


慌てて駆け寄り、ぎゅっと彼の腕を掴めば、その手を取られ、彼の大きな手に包まれた。


「お前は、どこで寝るつもりだ」

「?」


じぃっと見下ろされて、小首を傾げれば、ぽす、と繋がれてないほうの手が頭に乗っかる。それからぐっと顔が寄って、こつん、と額が重なった。


「俺の腕の中で寝ンのに、あんなもんいらねぇよ」

「っ!」


心臓が止まるかと思った。

ぱくぱくと口は動くのに、声にも言葉にもならず、顔の熱は急速にあがる。


スッと景虎さんが身を引いても、中々火照りは覚めないのに、繋がれた手を放すことが出来ないまま、片方の手で頬に手をあてて俯いた。


「これ一つでいいな?」


私の着替えやらと、景虎さんの着替えを詰め込んだ旅行鞄と、普段から使っている手持ちの鞄を手に、問いかける彼に、こくん、と頷けば、そのまま私の手を引いて、部屋を出た。

黙って先を歩く彼についていく私。

その心地のいい沈黙の中、にやける自分の顔。


枕が代わると眠れない私。タオルケットがないと、熟睡できない私。

そんな私が、景虎さんの隣で、彼の腕の中で、ドキドキしつつも、熟睡できるのは、彼の温もりと、包み込まれた時に香る匂いに安心するからなのか。

それをきっと、知っている彼は、私から安眠道具一式を取り上げたのだろう。

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