ゾンビ学園~ぼくらの小学校にゾンビが攻めてきた~

第一章 予兆 /遠足バス

金太は三階にある六年三組の教室にはいなかった。武田は教室横のトイレでついでに用をたしてから、吉光たちのいるはずの一階に下りた。トイレにいるときにどこかで物音が聞こえたような気もしたが、気になるほどの音ではなかった。

階段を下り、一階の廊下に出ようとするといきなり角から子供が飛びついてきて、武田はのけぞった。

「せ、先生!」

吉光が武田にすがりついていた。目にはハッキリとしたおびえがある。

「吉光か! 脅かすな。金太はいたのか?」

「いなかったよ、そ、それより先生、はやくバスに戻ろう、はやく」

震える声で吉光は必死に武田の手を引っ張った。

「わかったから、そんなに引っ張るなよ。……ん? 春樹はどこだ?」

吉光はそれには答えず無言で武田の手を引き、校舎の出口に向かい歩き続けた。

「どうした? お前、顔色悪いぞ、大丈夫か」

「……リイ先生」

吉光は決心したような表情をして武田を見上げた。

「リイ先生、ぼく知ってるよ。春樹はバスに戻るって言ってたよ。春樹の奴は怖がりだからね、きっと逃げたんじゃないかな、ほんとだよ」

そう言い切った後、武田から目をそらすようにしてうつむいた。

何か隠しているのが見え見えだった。春樹と吉光が普通の友人関係でないことは、薄々勘づいていた。隠していることはそのことに関連したことだろうか。

「いいか、吉光、これは大事な……」

「あー! バスが動いてる!」

吉光が玄関口の外を指さして叫んでいる。

また、嘘をつくつもりか……。

そんな気持ちで振り返って見た武田だったが、いきなり目が点になった。

本当にわが6年3組の遠足バスが出発してしまっているではないか。バスは背を見せて、走り去っていこうとしている。すでに校門のところを通過しようとしていた。

!!?

どうして?

武田は唖然としていたが、次の瞬間バスを追いかけるために廊下を全力で走り始めていた。

なんてこった。俺のクラスは呪われているのか? そう思いながら。

武田が走り去った後、吉光は力つきたようにその場にへたり込み、震え出す体を押さえた。全身の震えはいつまでも止まらなかった。

0
  • しおりをはさむ
  • 10
  • 0
/ 164ページ
このページを編集する