ゾンビ学園~ぼくらの小学校にゾンビが攻めてきた~

第五章 希望 /絶望

「なんだよ…あれはッ!」

美雪たちのすぐ後ろで隊員東が目を大きく見開き溶子を見つめている。

「冗談じゃねえッ、冗談じゃねえぞッ! あんなバケモノ……」
 
悪魔でも見たような恐怖の表情に顔をゆがめ、東は大声で叫んだ。

そして小銃を両手に抱えたままくるりと背を向け、半狂乱の体で東は出口に逃げ出していった。

その東を振り返る余裕もなく美雪たちは呆然と溶子を見ている。

「……帰さないって、言ったでしょ……私の可愛い子供たち」
 
そう言いながら、したたる血が溶子の足下に異常なほどに、たまっていく。 

「もうおしまいよ……」

うさ子は絶望に崩れ落ちそうになる体を必死で支えていた。

火炎瓶はもう使い切り、頼みの綱の兵士たちは、狭い機内の中で十分に戦えないうちに、あっという間に倒されてしまった。

そして生き残った唯一の隊員はあっさりと彼らを見捨て逃げ出していった。

「ぼくたちの負けです」
 
慶太はうつむき、唇を噛みしめながら低く言った。

お兄ちゃん、ごめん、お兄ちゃんの仇うてそうにないよ。

美雪は押し黙り、ただ敗北感に打ちひしがれていた。
戦おうとする気力が根こそぎ奪われてしまった。

もう誰も助けに来ない、たとえこの場をうまく凌いだとしてもその先は、いったいどうすればいいというのだ。

「待てよ! まだ希望はあるぜ」

伊達が力強い声で言い放った。

「いったいどこにそんなものがあるっていうのさッ!」

うさ子はヒステリックにうめいた。

「あれさ!」

伊達が目で指し示した。その視線は、南側のフェンスの外、中庭に注がれていた。
 
その視線を追って、うさ子が目を落とした、まさにその時、中庭を疾走する一台の車が、派手にクラクションをならした。

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