ゾンビ学園~ぼくらの小学校にゾンビが攻めてきた~

第一章 予兆 /うしろ

校門を飛び出し、坂を転がるように駆け下りてなお、往生際悪く金太は逃げ続けていた。

今日、俺走ってばっかりだな……

追いかけながら武田は思っていた。

しかしとうとう金太は息が切れて、道路にぺたりと座り込んだ。

ずいぶんと逃げたものだ、武田はあきれた思いでいた。

山の上の学校からここまで数百メートル、ほぼ中腹辺りまで来ていた。二台の車が楽に行き来できるほど広く幅をとられた道路には、人っ子ひとりいない、荒い息を吐いている金太と武田だけだ。

座り込んだ金太の背中を見ながら、武田は立ち止まり少し息を整えていた。空は曇っているとはいえ、もう春だ。ひどく暑かった。

すると涼風が一陣、吹き込んだ。ガードレールの向こうは空で、そこは崖になっているから良い風が吹いていた。道路を挟んだガードレールの対面には学校を支える高い壁があってそれが道なりに続いている。

「やっと捕まえたぞ。世話やかせやがって」

武田は歩み寄りながら言って、金太の襟首をぐいと掴んだ。

「お願い、ぶたないでリイ先生」
 
金太は泣きそうになりながら情けなく懇願した。武田は手を離し、つとめて穏やかな口調で言った。

「ぶたないから、言ってみろ、お前ずっとどこにいたんだ?」

「それは…………うぎゃあ!」
 
金太は目を大きく見開き、いきなり叫んだ。彼の目線は武田の背後に固定している。

「何だ? 変な声出すな」
 
怪訝そうに武田は金太の顔をのぞき込んだ。

「せ、せせせせ、んせい、う、う、後ろ……」
 
道路に座り込んだまま、震える右手を持ち上げ金太は武田の背後を指さしていた。

「ワハハハ! その手には乗らんぞ…………ん?……」
 
武田の笑い顔が一瞬で真剣な表情に変わった。

今まで感じたこともないおぞましい何者かの気配を背中に感じたような気がしたからだ。

武田は後ろを振り返ろうとした。

しかしその瞬間、背後から武田の肩を青白い腕がぐいっと掴んだ……。

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