ゾンビ学園~ぼくらの小学校にゾンビが攻めてきた~

第二章 急変 /恐怖

「先に行け! 金太ッ」

周囲を満たす恐ろしいざわめきの中、武田は叫んでいた。

死人のくせに! 死人のくせに!

なんであんな足速いんだよ!

金太は全力で坂を駆け上がりながら無意識にぶつぶつ、繰り返しつぶやいていた。

坂を必死に上って逃げていた二人だったが、金太は疲労のせいか恐怖のせいか足は徐々に鈍り、何十というゾンビにほとんど追いつかれそうになっていた。

奴らのうめき声がすぐそばで聞こえる度に、何度も金太はズボンを濡らしそうになっていた。

「はやく行くんだッ!」

武田は躊躇する金太に向かってもう一度叫んだ。
 
かっこよくそう言ってみたが武田は本当はめちゃくちゃ怖かった。

しかし今、金太を守ることに何のためらいもなかった自分自身を誇りには思っていた。それだけでいいような気がした。  

「で、でも」

金太は恐怖にゆがんだ顔で武田を見つめた。

「いいから、俺もすぐに追いつくから」

力強い声で武田は言い、くるりと迫り来るゾンビの方に向き直った。武田はここに踏みとどまり、金太が逃げ延びるだけの時間を稼ごうと決心していた。

「ぜ、絶対、やられんなよ先生!」
 
震えそうな声を押さえ、走り出しながら金太は声の限り叫んだ。

「ああ、任せとけ!」

武田の大声を背後に聞きながら、金太は死にものぐるいで坂を駆け上っていった。

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