ゾンビ学園~ぼくらの小学校にゾンビが攻めてきた~

武田は必死に突破口を探した。

背にしている壁の八メートルほど上には、防球ネットがありその中は校庭だが、壁はほぼ九十度に近く登ることは不可能だった。

また、ゾンビの背後、幅広の道路を挟んだ対面にはガードレールがあり、その下には町へ続く舗装道路があるが、下まではほとんど垂直の崖で、三階建ての家屋がすっぽり入るぐらいの高さがあるので、そこからの脱出は不可能に近かった。

運が良ければ落ちても死なないかもしれないが、動くことが出来ないほどの重傷は免れないだろう。半死半生のままで奴らに襲われることを考えると恐ろしかった。
 
やはり、何としてもこの包囲を切り崩すしかないようだ。

だが、いったいなぜこんな事になってしまったのか? 
武田はそう思わずにいられなかった。

目の前に立ちはだかっているのは、町を歩いていると日常見かけるような人ばかりだ。会社員、学生、主婦、みな一様に生気のない目をして襲いかかってくる。

今朝、学校に車で来る途中に見た町の様子はいたって平穏で、危険な兆候も何もなかった。

もしも、登校してからいま(午前十時くらいだろうか)までの二時間ぐらいの時間で、これほど多くの町の人々がこんな風になったのだとすると、この狂気は伝染する類のものなのかもしれない。それも爆発的な感染力を持った。
 
そしてこの事態が伝染病の集団感染だとするならば、ますます状況は悪いと言わざるを得ないだろう。感染ルートは不明だが、連中から受けたかすり傷ひとつが命取りになるかもしれないからだった。
 
それには、ほとんど触れられもせずにこの包囲を突破しなければならない。至難の業だ。

だが、武田の胸の中で若き日の闘争心が甦る感覚があった。武田は全身の神経を研ぎすまし、ゾンビの攻撃を待っていた。

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