ゾンビ学園~ぼくらの小学校にゾンビが攻めてきた~

第四章 計画 /トイレ

「行こう、美雪」

うさ子と美雪、二人はトイレに向かって廊下を歩き始めた。

慶太と松林はもう用務員室に行っていて、いない。
 
久しぶりに二人は少し落ち着いた気分だった。

振り返れば門のところでゾンビを見て以来、怖い思いをさせられるばかりで心が安まる暇がなかった。

玄関口からは相変わらずゾンビのうめき声が聞こえ続けていたが、その音にはもうすっかり慣れっこになってしまっていた。

到着したトイレ内は薄暗く、美雪が照明のスイッチを入れた。

「お腹へったね」
 
うさ子はそんなことをいいながら個室に入っていった。
 
美雪は別にトイレには行きたくなかったので、入り口の側に備え付けられた鏡の前に立った。

映し出されたのはいつも見ている12才の女の子の顔だった。

すっと流れる意志の強そうな眉、だが、瞳は甘く優しそうだ。すっと通った鼻筋にやや厚めの唇、自分でもわりと気に入っている。
 
だが今、美雪の表情は恐怖に疲れかげっている。よく手入れされていた長い髪はばさばさに乱れ、雨に濡れ湿っていた。

そして前髪をあげるとおでこは赤くすりむけていた。ゾンビに髪を掴まれ門に頭を打ちつけた時に出来た傷だ。

「あ、これ絶対明日あざになるよ」
 
額の傷を恨めしそうに見ながら美雪は言った。そして乱れた髪を直そうとポケットに入れていた携帯用のくしでとかし始めた。
 
水を流す音がしてうさ子も個室から出てきた。だが、うさ子は美雪の姿をなぜか怪訝そうに見ていた。 

「美雪……?」

美雪は髪をとかそうとする姿勢のまま、ピクリとも動かないのだった。

「あ……!」
 
美雪は突然そう声を漏らした。鏡に自分の姿を映したまま立ちつくしている。だがその顔がみるみる青ざめていく。

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