いつだって恋は不条理だ

1.彼の隣の非日常 /出没


出没
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大きな欠伸が一つでた。


もうそろそろ日は落ちそうで、空の雲の上に淡いマーブルカラーを描き出している。


ストローを唇で緩く咥えて吸えば、ズコココと珈琲牛乳のパックが勢いよく凹んだ。


季節は初夏を迎え、日も長くなったからか、部活帰りでもまだ外は明るい。


エナメルバックを肩に背負い直して、重くなった足をゆったりと運んだ。


朝倉、と表札のかかった家の門を開け、バックから鍵を取り出しながら玄関へと向かう。


共働きで両親は夜遅くまで帰ってこないし、兄はとっくのとうに一人暮らしで大抵家には誰もいない。


ポストへと視線をやって郵便物の有無を確認しつつ、キーケースをジャラジャラとならせて鍵を開ける。


ここまではいつも通りだった。


そう、本当にいつも通り。


「……ただいま」


呟くようにそう言って、薄暗い玄関に明かりを付けようと、パチンとスイッチを入れた。


目の前の光景を凝視し、口からは間抜けな声がポロリともれた。


肩に引っかかっていたバックが滑り落ちて、木目調の床に音を立てて転がった。


目の前には、彼の知らない少女がいた。


口に俺の夕飯になる筈だった魚を猫のように咥え、右手にはコーラ、左手にはポテトチップスの大袋。


抜き足差し足の格好で静止し、こっちを見ている。


……誰⁉︎

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