bittersweet【完】

第二部 /━cynical━




私が中野さんと会ったのは。寂しいほどに、都会のネオンにかき消されかけた夜空が顔をだしていた日だった。


大学もあと2年、なんて思っていた春のこと。まだ桜が咲き、その綺麗な枝先を見せつけていた時期。



例のごとく、私は1人で大学からの帰り道を歩いていた。



と。

『陽?』



幾分か聞きなれた声が私を呼ぶのを感じ、一歩出しかけた足をまた揃えた。


ふらり、風に誘われるように振り返れば。



「叔父さん。」



スーツ姿の叔父さんが車から顔を出していた。あまりの偶然に、言葉を迷う。



なんでいるんだろう。そんな安っぽい思考は叔父さんの手招きで中断。

小走りでその車に近づく。そこで初めて助手席に"誰か"乗っているのに気付いた。



日も長い、春の夕方。薄く藍色を含んだ空が私たちを見下ろす。



『やっぱり陽だ。』


にこり、微笑んだ叔父さんは乗れよと爽やかに言った。



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