bittersweet【完】

第三部 /━cowardice━




喉の奥が潰されてしまったようにかすれた音にもならない空気を吐き出す。それに気付いた電話の相手は心配そうに声を発した。



"陽?どうかしたの?"

「………、叔父さん。」

"うん、大丈夫?"



そう。電話をかけたのは叔父さん。頭の深い部分を殴られたような鈍痛を感じながら私は手の中にある鍵を握りしめた。


ぎゅ、と。その形をリアルに感じてまた心が不安定に揺れる。



「あ、の………、」

"ん?"

「…。」



この名前を口に出すのに勇気がいるのは、前と変わらない。













「中野さんは…、まだ叔父さんの家…?」


"…。"



"中野、まだ俺の家にいるよ。"



そのまだ、は"しばらく"の意味だったんだ。叔父さんとの間にある沈黙に目をきつく閉じた。



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