bittersweet【完】

番外編 /◎short story




"もしもし、陽?"

「あ、…はい。」



ある日の夜。中野さんから電話がかかってきた。夜の静けさに混じるような声に、そっと立ち上がり、窓の外を見つめた。



"俺、明日休み出来た。"

「…そうなんですか。」



カーテンを握り締め、声色に出そうになるのをなんとか堪える。


中野さんときちんと付き合うようになってみて、何か変わったのかと問われれば、格別変わったことなく。



ただ、思ったこと。
私は前から存外、中野さんから大切に大切にされていたという、それ。




"そうですか、って。"

「…すみません。」

"お前は?"

「明日から、三連休です。」



外は既に濃紺のそれが脚を広げており、飲み込むように街頭の上から光という光を滲ませていた。


朝と変わらず同じ人間が息をしているというのに、夜という空間の中ではまるで私だけが置き去りにされたように感じる。



冷たい、ガラス。指先を這わせて、私は私自身をうつすガラスの温度を吸い取った。




"三連休か。"

「はい。」



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