bittersweet【完】

第一部 /━immoral━




――――――…

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講義が終わり、1人中庭のベンチでお昼を食べようとしていた。


と。


『こーんの。』


鮮やかな赤色が目に飛び込んできたと同時に人懐こい笑顔が私を覗きこむ。


少し驚いたが、初めてではないので声をあげることはなく、ゆっくりその名を音にした。



「兼子くん。」

『今日の朝メールしたのに。』

「あー…ごめん。」


中野さんの発言で複雑に絡まった思考に気をとられ、返信を忘れていた。


ばつが悪そうに苦笑いを浮かべた私。


『ま、いいよ。』


にこり。効果音がつきそうな笑顔でそう言うと元気よく私の隣に腰かけた。


小さなベンチでは自然と肩が触れ合った。



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