bittersweet【完】

第一部 /━painful━




その日。私が起きた時には中野さんはいなかった。


乱れたシーツに触れても体温はなく、しばらく前に帰ったのだと暗黙の上に告げられていた。



早朝の日の光が、不健康なほど真っ白く泣き出しそうな私を照らした。



きっと、彼は、もう来ないから。



ペタペタと裸足がフローリングの床を歩く。どうしても寒くてブランケットを羽織ってリビングへ向かった。



玄関に起きっぱなしにしていたビニール袋はなく、冷蔵庫を確認すればきちんと入っていた。



「…、」


それが少しだけ、悲しかった。



けど。家のどこを探しても、あの合鍵は見つからなかった。



それが私の期待してしまう心を揺さぶった。


きっと来ないはず。でも来るかもしれない。



馬鹿な私はやっぱり二人分の夕飯を作るんだろう。



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