崩れかけのプロポーズ【完】

16つめ /決して器用じゃないんです




このお話は、私と水樹くんの付き合う前のお話だ。



衝撃的すぎる初対面を終わらせた私と水樹くんは、そのあと連絡先を交換し、水樹くんがかけてくれたり私からかけたり。

近すぎず遠すぎず、な距離を保ちながら四ヶ月ほどをやってきた。


そして。その日は水樹くんと待ち合わせをしていたわけじゃ、ない。

だから私は会社帰りの道をいつもみたいにゆっくりゆっくり、歩道の石を2つ飛ばしで家までつけるかなんて。


なんとかそれを達成させようとふらふら暗闇の中歩いていたら。




「、わ、」



ぐん、と。どこからかは分からないけど、暗闇の中から伸びた手に腕を掴まれて驚く。それだけで涙が出たなんて恥ずかしくて言えないけど。




「あ、…の、…やっ」



『菜々。』



パニックパニック。そんな単語しか出てこないくらいの、その通りパニック。


と。
耳に届いた落ち着いた声に、ゆっくり顔を上げた。




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