崩れかけのプロポーズ【完】

19つめ /もう言い訳はなしで




『起きろ、菜々。』

「…ん、………え?」

『起きろ。』

「…、」



目覚めた時には、極寒零度の表情で自衛隊の訓練を彷彿とさせるような命令を恐ろしくも二度口にする、彼氏さんがいた。




――――――――――…



「(まだ5時なんだけど…!)」



洗面所で顔を洗いながら、心に渦巻く不満をどろどろと垂れ流す。まあ、言えないんだけどね。


何で?そんなの決まってる。




『ほら。』

「う、わ」

『酷い顔してるから早く拭いて。』

「…、」



真横で看守のように私を見下ろす水樹くんがいるからだ。タオルを顔面に叩きつけられた攻撃と、辛辣な言葉の攻撃でもう復活出来ないかもしれない。



仕方なくだらだらと顔を拭けば、水樹くんは小さく言った。




『遅い。』

「…、」



聞こえてるし、ばっちり私の心に深い傷が残ってるんだからね。



とは、言えなかった(あとが怖いから)。



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