崩れかけのプロポーズ【完】

20つめ /これからどうぞ宜しく




「…。」



ここは、何て言って入れば良いの、かな…。


私は大きなドアの前で立ち往生していた。鍵を持っているから入れば良いんだけど、いきなり我が物顔で入ったらそれは図々しい気がして…。難しい。




携帯を見たら、ゆうに20分使っていて自分の馬鹿さかげんに、ぎゃ!なんて色気のない悲鳴をあげた。




と。
かちゃり、目の前でそんな音がした。



そして当たり前のようにドアが開くと、中から不思議そうな顔をした水樹くんが出てきた。




『なんかガタガタしてると思ったら…。』

「ご、ごめんなさい…!」



ほら、とドアを開けた水樹くん。部屋着に包まれた体が見えてちょっと格好いいな、なんて。


それでもまだ突っ立ったままな私に、水樹くんは少し笑いながら言った。




『おかえり。』

「…ただいま。」



くすぐったい言葉と共に、私はずっと動かなかった足を部屋の中へ進めた。



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