29回目の夏

二章 立ち向かうは、主よ。 /宣戦布告のその前に。

「寝てたよな?お前寝てたよな柴田ぁ!?」

「起こしましたよね、お嬢。」

「秋楽はいつ来たんだ、何のために!?

「柴田っちと飲むためーって、うっそー。
クソ太郎の仕業か、はたまた大クソ奥様の仕業か。
どっちだろうねぇ?なつ。」


つまらない冗談のついでに言うことじゃねーしそれを調べろって言ってんだしお前の出番はまだねーよ!


そう心の中で込み上げる色んな苛立ちも。


へらっと笑う秋楽の顔を見てしまえば。


「ねー、どっちだろう。
そもそもバレてたなんて、さすがに怖い。」

「俺の存在なんて屁でもないってことー?」

「せっかくの[カモフラージュ]も意味無いってか。」

「何度立派なスーツ着てなつと一緒に[静岡入り]したか分かんないよ?
無意味だったわけ?なんなの?」

「無意味じゃねーよ、しっかりとお前を調べろと大奥様に言われたからな、全部知ってるこの俺に。
けど清太郎は俺に、何も探らせねーから。」


つまり、この男。
秋楽…本名はまた別にあるのだが夏美が夏なら俺は秋な!と高校の時、趣味である女装を夏美に知られた頃に決めた…所謂[源氏名]とも言えるそれ。


勤務先のおかまバーではしっかり秋楽と名乗っている、夏美の高校時代の同級生で、親友で、柴田と同じく夏美に忠誠を誓ったこいつ。


【桐生一輝 きりゅういつき】


自分の理解者は家族含め誰もいないと、人に心を開けなかった両性の持ち主だった彼を。
なんの偏見も持たずに受け入れ、居場所を与えた夏美に。


お前がしてくれたのと同じだけ、俺もお前のために。
そう誓った高校時代、お互い唯一の友達だった頃。

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