桜龍Ⅴ

第十章 /勇敢な男




笑い声、たくさんの足音、ドアの開け閉めの音、エンジン音。他愛のない日常の音を拾いながら、窓の外を眺める。


まだ寒い分、コートやジャンバーを羽織った男子生徒が多い。マフラーを巻いて防寒対策して着膨れた生徒を何人も見送っていた。




「まだ残ってたんですか」


しんとした閑散な教室に響いた低い声。


あたしは一瞬身体を揺らして、振り返る。


「まっちゃん」


あたしの顔を見て少し表情筋を緩めたまっちゃんは、遠慮なく教室に入ってきた。窓辺に立っていたあたしの隣に寄り添うようにして立つ。


「なに考えてます?」


あたしと同じく窓の外を眺めながら、少し瞼を伏せた。


「んー。まっちゃんはさぁ、周りに避けられるくらいヤケになったことある?」


「それは……どの具合から判断すりゃいいんすか……?」


あ、本気でから笑いしてる。


「聞いたあたしが悪かった」


額に手を当てて、ふう、と息を吐いたら、まっちゃんは声をあげて笑い出した。一頻り笑って、頬杖をつく。


「ヤケっつうか暴れることは……俺はしょっちゅうだったんで紅龍に入ってからはよく怒られてましたよ。それこそ道が開くくらい人は寄ってこなかったことありましたし、危険人物みたいな扱いになったこともありましたけど」


なんだそんなこと、とでも言うように昔のことを語る。



「そうだよね」


0
  • しおりをはさむ
  • 2702
  • 8698
/ 200ページ
このページを編集する