『青春の記憶/心の中の大切な日記』【完】

ゆりも俺と同じように心の中で
おばさんに手を振っていた。


『ゆり・・・!ゆりーーーー!』


俺は大声で叫びながらゆりの方へ走った。

ゆりは背を向け何も言わず
全力で走って行った。


『ゆりーーーー!ゆりーーーー!』


ゆりは家の中に入って行った。


『ゆり・・・ゆり・・・』

俺はドア越しにゆりに話し掛けた。

『健ちゃん、帰って!
 健ちゃんに会いたくないッ!
 健ちゃんの顔を見るとつらい・・・。
 前にも言ったはずや!! 
 帰って・・帰って・・・帰ってよ・・・!』


ドアの向こうでゆりは泣いている。


『ゆり・・・・。
 あのスケジュール帳なら気にすんな!!
 香織さんの勘違いなんや。。』

『もう・・・いやや… 
 健ちゃんとおると
 香織やおじさんのことを思い出す…』



『だから、健ちゃんとは別れたい…』



ゆりは決心したように静かに言った。


俺は寂しそうなゆりの声を聞きながら
そっと話し掛けた。

『ゆり・・・お前の気持ちはよくわかった。。
 でも、今、別れるという言葉はやめよう・・・
 今は互いに会うのはやめよう・・・
      
 ゆりが苦しいのなら・・・
 会うのはやめる・・・・』

俺は何を話しているのかわからず
頭の中が動揺していた。

ドアの向こうで
ゆりの静かな泣き声が聞こえていた。


『じゃあ、俺、行くでッ・・・』
俺は小さな声で言った。


俺はポケットから自転車の合鍵を取り出し
玄関にそっと置き、駅へ歩いて行った。


ピンク色のいわし雲が一面に
浮かんでいた。

0
  • しおりをはさむ
  • 25352
  • 1484
/ 292ページ
このページを編集する