温かい手を持ってる  第一部

温かい手を持ってる ―第一章― /声

次の日、私は熱を出して学校を休んだ。
人生初の告白に知恵熱が出たらしい。

それでも私は夜になると繁華街へ出掛けた。
やっと私の存在を知ってもらったのに、このチャンスを逃す訳にはいかない。


繁華街のいつもの場所で人混みを見つめ、コータさんの姿を1時間程探していると、コータさんがこっちに向かって歩いて来るのが見えた。

私はその場に立ち上がりコータさんが私の前を通り過ぎるのを待った。

コータさんと私の距離は人2人分。

「コータさん、こんばんわ!」
コータさんが私の前を通り過ぎる時、私はそう声を掛けた。

その声に反応し、コータさんの視線が一瞬だけ私を捕らえる。
でも、私の姿を見ると、コータさんはすぐに視線を戻し、人混みの中に消えていった。

それでも私にはコータさんに声を掛けられた満足感があった。

見れるだけでいい。
私の存在を知ってくれただけでいい。

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