夕焼けノスタルジー【完】

1章 /それ以上は求めてないから




鏡の前、仁王立ちしながらも目の前の自分と暫くジっと睨み合う。そんな事をしても何も変わらんって分かってはいるけれど。



「嘘つきや」



美容師さん、クルクルになる事は無いって言うてたのに。



寝て起きれば少しはマシになっているかもしれないと思ったけれど、そんな事は全く無く、強めにかけたパーマはしっかりとそのままの状態で。



優さんの言った通り、こういう海外の子供見た事あるかも。



飴色の明るい髪にかかったくるくるのパーマ。背が低い事も相まって尚更そんな風に見えてきた。



ぷは、と堪えきれなかった笑いを吐き出したあの日を思い出しながらも両手でぎゅっと短い髪を握りしめる。肩にも付かないベリーショートの髪。洗うのも乾かすのも何でも楽。



あの頃と違う軽さを改めて実感しながらも、ふと吐き出した一瞬前の自分の言葉が別の声になって返ってきた。



『嘘つき』



ボロボロになった髪を見て、絶望したような悲しい瞳を向けられて胸が痛んだ。綺麗って言うてくれた、この髪を好きって言うてくれた、約束もした、だけれど全部裏切ってしまうんやとその時ようやく理解した。



もう二度と戻れないみたいに、足元には適当な長さで切り刻んだ髪が散乱していた。爪先に絡みついたそれは解けた鎖みたいだと思うと、どうしてももう戻れなかった。



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