夕焼けノスタルジー【完】

3章 /ごめんなさいと、謝りたかった




伏せられた睫毛がとても長い事を改めて知って、いつも朝目が覚めると温もりでも求めるみたいに、背後から抱きしめられている事を知って、お腹に回った腕の重みに安堵する。



まだ目覚ましの音すら聞こえない早朝から、そんな事を確認するのが最近の日課になってしまった。



肩越しに振り返るとまだ眠っている、優さんのあどけない寝顔が瞳に映る。



微かに聞こえる寝息が耳もとをくすぐるようで、その瞬間を崩してしまうのが惜しくて目覚ましよりも早く目が覚めた。



腕の中に抱え込むように回された腕に、そっと手の平を這わせる。指先が触れると、求めるように絡められて胸が苦しくなった。



あと何回、こんな風に隣に居られるのか。あと何度、このあどけない寝顔を見られるのか。



幸福な気持ちと相反するようにそんな事を考える。



「……ん」



背後で身じろぐ気配を感じると、互いの間にできていた隙間を埋めるように優さんが私の背中に身体を寄せてきた。



再び腕の中へと抱き込まれる格好になって、そっと瞼を閉じる。まだもう少し、出来る事ならゆっくりと時間が過ぎてくれたら良い。



目覚まし時計が鳴るその時まで、意識は覚醒したままで、腕の中の温かさに浸るように息を吐いた。



過ぎて欲しくないと思う時間程あっという間に過ぎてしまうし、1分1秒すら一瞬の事のように思えてしまう。


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