夕焼けノスタルジー【完】

3章 /きっと二人なら大丈夫




「もう……やから何で!」


「何でって言われても……」



リビングのテーブルに散乱している物件チラシを一枚一枚確認していく。不動産屋の前に置いてあったものや、ポストの中に入っていたものが主やけどーーーーーどうしてこう、まともなものが一つも無いのか。



必要最低限って言葉知らんのかな。



仮にもトップモデルの優さんが、お風呂とトイレ一緒とか、事故物件とか、もっと他にあるやん。



「引っ越そうと思う」と、優さんの口から言われたのは丁度一カ月前くらい。唖然とする私に、優さんは大した事では無さそうに「持て余してるって分かるから」と言った。



確かに一人で住むにしては広すぎる部屋やった。セキュリティ面は万全やけど、ここは手つかずの部屋ばかり。



そこには昔の思い出が沢山詰まっていて、優さんは出て行く事が出来なかったのだと本音を吐露した。



「元々親父が勝手に決めた部屋やったけど、今思えばあの頃の俺には丁度良い場所やったと思う。誰かしら泊りに来てくれて、使ってた部屋がほとんどやったし。やけど今は、使ってる部屋は限られてて、それはこれからも変わらんのかなってやっと納得がついたから」


「……無理して……無いですか」



その大切な思い出を、無理矢理忘れようとはしていないですか。


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