夕焼けノスタルジー【完】

1章 /私を縛っていた鎖は全て引きちぎって捨てたはず




「現場行く前にコンビニ寄れる?」



撮影現場へと向かう道すがら、赤信号で捕まったタイミングで後方から声がかかった。



バックミラー越しに確認すると、黒縁の伊達眼鏡をかけている優さんが何とも言えない表情でこっちを見ていた。



「寄れますよ。どこのコンビニでも良いんですか?」


「うん、どこでも」


「確かこの先にあったはずなので、そこに寄ります」


「お願いします」



ペコンと深く下がった頭に口元が緩みそうになって慌てて引き締めた。前方を見据えると青信号へと丁度変わって、アクセルをゆっくりと踏み込んでいく。



風邪の一件から暫く、優さんの可愛い一面が目立って見えてしまうような気がする。



勿論腹を立てたくなる事も増えたけれど。以前より少しだけ素を見せてくれる事が多くなったような気がしてる。



頼ってくれる、甘えてくれると言える程では無いけれど。


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