怪異と私の恋物語【完】

第二章 波乱万丈 /懇願

冷たい空気が室内を包む。
人を圧倒させ、怯ませる存在感。
無表情に私を見つめる魁は、正しく怪異の頂点に立つに相応しい姿をしていた。

【人間】を見下した口調。
それに懐かしさを覚える。
遥か昔に聞いた事があるような気がした。

魁は、私の顎を掴むと上へと向かせ、意地悪な笑みを浮かべ口を開く。


「菜舂よ、何が不満か申してみよ。
この容姿か?先刻までの口調か?
我の態度が気に食わなかったか?
何ゆえ我が愛を拒む?
望みがあるなら叶えてみせよう。
さぁ、申してみよ愛しい人よ…」


私の頬を艶めかしい手つきで撫でられ、ゾクリと背筋が震えた。

口調は多分、魁の素だろう。
短髪だった髪は、いつの間にか魁の腰丈まで伸びていた。
艶やかで滑らかで枝毛が一本も無い本当に羨むほど美しい髪。
そして、この容姿…なんて反則級の生き物なんだろう。

魁は、私の反応が面白いのかおかしそうに口端を上げながら私の髪を愛でる。

余裕な表情が悔しくて、そして、腹が立った。
私がどんな気持ちか知りもしないで、またいけしゃあしゃあと、私に愛を囁く魁に憤りを覚えた私は…


「じゃあ、私に仕えた理由を今ここで述べてみせて…。
何故私を愛しているのか言って見せてよ。
私が信じられないって言ったら、もう私に愛を求めないで」


そう言うと、魁は固まった。
マジマジと私を見つめ、本心を探ろうとしているのが分かる。
そして、私が本気と分かると呆れたように深いため息をついた。


何それ、むかつくんですが。


私から手を離し、距離を保つと、偉そうにあぐらをかく。
そんな格好なのに、何故か絵になるのだから不思議だ。
美形だからなのか?

何処からか、煙管を取りだすと堂々と女子更衣室で煙を吹かし始め、私を色っぽい目つきで見据えた。

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