怪異と私の恋物語【完】

第二章 波乱万丈 /狂気

目の前に繰り広げられている光景はなんだ?
菜舂様が、アノ男に接吻されている?
彼女が、アイツの花嫁?
アイツのモノ?


ふ ざ け る な



「余所見してるなんて余裕ですね、魁」



あぁ、勘違いも甚だしい。
ずっと彼女を思っていた?
それは自分も同じ事。
許せない。
自分以外の誰かが彼女に触れるなんて、
彼女を視界に入れるなんて。


自分が居て置きながら、
彼女に触れる事を許してしまった。
そんな自分が何より情けなく、
腹ただしい。


目の前で自分を呼びすてにし、
攻撃を仕掛けてくる白蛇。
鬱陶しい。
何より、自分は機嫌が悪い。


余裕なんて今は無い。
心の中は荒れ狂っている。
菜舂様が他人のそれに触れる瞬間を
見てしまったのだ。


憎い。
奴が憎い。
早く菜舂様を奪い返さなければ。
その為には、



「邪魔だ、消えろ」



血の飛沫が降り注がれる。
懐かしいこの匂い、暖かさ。
若かったアノ頃を思い出さされる。


只管、力を追い求め
自分の前に立ちはだかる
全てを薙ぎ払っていたアノ頃。


菜舂様の手前、
血が苦手だという彼女の手前
遠慮をしていたが、
もう、その必要性を感じない。


菜舂様。
我が主人。
愛して止まない我が主人。
今すぐ助けに参ります。


腕を胴体から抜くと
更に血が流れる。
血が自分の顔に降り注がれ
服が汚れるが問題は無い。



昔の服装に戻ればいいだけの話。



動きにくかったスーツから
太古から着なれている
着物に着替える。
血は、風と水で吹き飛ばせば問題ない。


操れるのが、火だけだと思ったら大間違いだ
己の力を過信するなんぞ愚かな白蛇よ。


ドシャと派手に地面に倒れる。
血の海が自分の足元まで及ぶ。
あぁ、血で汚れてしまうではないか。
汚らわしい。


まだ生きては居るが、
もうこれで反撃は出来ないだろう。
視線を奴から離し、
菜舂様へと向ける。


あぁ、愛しい菜舂様。
何故、貴女の瞳は私を映していないのですか?
頬を紅色に染めるのは私だけでいい。
触れるのは私だけ…
なんで簡単な事に気がつかなかったのだろう?
菜舂様に触れた輩は、



消してしまえばいいだけの事なのに。



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