怪異と私の恋物語【完】

第二章 波乱万丈 /悲嘆

重い空気。
息苦しさを覚え、
濁った視界をクリアにすべく
何度か瞬きをした。


あぁ、これはまだ夢の世界なのだろうか?
そう思いたいと強く願いながらも、
変わり果てた弥鶴の姿を見て、
あぁ、やはり彼は怪異なのだと再認識した。


美しい白銀色の髪、
タンザナイトを思わせる澄んだ瞳。
その姿は、神々しく、
私とは似ても似つかなかった。


頭が重い。
回転が鈍い。
驚愕に満ちた顔で弥鶴が視線を送る先を
ゆっくりと顔を向けると、
そこには…



渦々しい【何か】が居た。



それを中心に、歪みが生じているのが分かる。
室内は、うす暗く、光が差し込む隙間は無い。
不気味な色に染まった世界に
私は恐れを抱き、
それを発しているであろう、【ソレ】に対して、
恐怖を覚えた。



「…本当に三大悪妖怪の名に相応しいよ、大天狗」



弥鶴が呆れた口調で喋る。
瞳がこちらに向けられる。
怖い。
私を襲う殺気。
負の感情を具現化したような世界。



一体【アレ】は何?



現状を確認すると、私は壁に身体を預け
床に座り込んでいた。


大天狗と呼ばれる恐ろしい姿のモノ。
肌は、浅黒く、目は不気味に赤く光っており、
全てを憎んだように殺気立っている。
袴の上に武士の鎧を被り、一本歯の高下駄を履いていた。
その背中からは、悪の化身のような
【死】を思わせる黒翼が生えており、
正に死神を具現化したような姿だった。


アレが天狗?
随分と思っていたイメージとは違う。
鼻は確かに高いが、
外人のような鼻の高さであり、
人間との差異はさほど無い。
日本人でも今ではあれくらいの高さは居る。


端整な顔立ちながらも、
獣のような姿。
鋭い爪が鈍く光る。



ソレに対面していたのは、他でも無い弥鶴だった。



静寂に包まれ、
二人は対峙し合う。
どちらも動かない。
ただ聞こえるのは、双方の息づかい。


ふと、大天狗と呼ばれるソレが私に目を向ける。
思わず、身体を構えるが、
その姿に恐ろしさと同時に、懐かしさを覚えた。
そして、そのおどろおどろしい姿とは裏腹に、
ソレの瞳が私を捕えた瞬間、



瞳が揺れた


0
  • しおりをはさむ
  • 2994
  • 107
/ 286ページ
このページを編集する