怪異と私の恋物語【完】

第二章 波乱万丈 /対価

ダダ漏れの妖気。
瘴気も混じっており、俺の傷口に染みる。
陽と陰は、相反する関係。
絶対に交わる事の無い。
たとえるならば、黒と白。
光と影。


陰にとって陽が致命的というのならば、
その逆もまたしかり。
俺にとって、魁が仕掛けてくる攻撃によって
請け負った傷は、いくら神の化身と言われる俺でさえ
そう簡単に治せない。
相手が上級妖怪ならば尚更だ。


長期戦に持って行って、
妖気を出し尽くさせて殺そうと思った。
だが、それを全て覆させる事が出来る
唯一の存在が、戦場に現れた。


振り向かなくても分かる。
気配、香り、足音。
お前の事なら全て分かってるよ。
愛しい俺の菜舂。



何故、お前はココに居る?



俺の動揺を見逃すまいと
目の前の敵は、爪で俺の肩を抉った。
思わずうめき声を上げた。


あぁ、血が苦手な菜舂。
こんな血生臭い場所に来てはいけない。
お前がこんな汚れた者を見る必要は無い。
大丈夫だ、俺がすぐに消し去ってやる。


呪術を使い、鎖で奴を縛り上げる。
咆哮を上げ、引きちぎろうと暴れる獣。
理性を失った時点で
お前の負けは決まっていたんだよ。


奴の手から落ちた剣を足で折る。
造作も無い作業。
砂となり風に吹かれ、剣は消えた。
持っている扇子は、振り上げられなければ害は無い。
身動き一つ出来ないだろうな。
動けば動くほど妖気は吸い取られる。



死ぬのを急がせるだけの鎖なのだから。



菜舂と唇を重ねた時にすぐに分かった。
他の男の味が微かにした。
考えなくても分かる。
お前が菜舂に触れたのだろう、魁?


私怨だと言って非難するならすればいい。
神の化身?望んでなった訳ではない。
たまたまそう生まれてきてしまっただけ。
命を救うべき存在の八咫烏。
守護神とも呼べる存在。
だが、俺も生きている生物だ。
感情くらいはある。


愛しい人が、他の奴に触れられた。
それも俺がまだ触れても居ない、
禁断の領域に土足で踏み込んだ。
それだけでも万死に値するんだよ。

0
  • しおりをはさむ
  • 2994
  • 107
/ 286ページ
このページを編集する