怪異と私の恋物語【完】

第三章 過去 /平穏

「菜舂っ、これを藤の君様の元へお届けなさい。
くれぐれも慎重に、傷一つ付ける事無く届けるのですよ?
分かりましたね?」

「は、はぃ、分かりました」


圧力と共に上質な風呂敷に包まれた物を私は受け取った。
慣れない着物が動きにくくて仕方がない。
袖が邪魔でよく金具等にひっかけてしまうし…最悪だ。
っていうか、私は何故働かされているんだろう?


「ぼやっとしていないで早くおいきっ!
藤の君様をお待たせしてしまったら…どうなるか分かってるでしょうね?」

「はいっ、いってまいりますですっ!!」


魁はどうしたのだろう?
弥鶴は一体何処に行ったんだ?
朱利は、大丈夫なのだろうか?

部屋の襖を開けて、廊下に出れば広がる桜吹雪。
私の記憶が間違っていなければ、季節は秋だった筈なんだけど?
何故、私はこんな女中の格好をしているのだろう?
っていうか、【藤の君】って誰ですか、お姉さん。



そもそも、ここは一体何処だ?



私は、確か家に居た筈だ。
制服を着て、弥鶴と魁が家の中で激戦を繰り広げていて‥。
なのに、ここは一体何処の日本家屋だ?
しかも、かなり上流階級の方の家と見た。


廊下を出たら、庭に池付きのオプションってどうよ?


しかも、私と同じ服装をした人が何人も居た。
どんだけ金持ちだ?
いや、ここはそもそも誰かの【家】?
どちらかというと、職場というかなんというか…


お偉いさんの家っぽい感じだ。


日本だというのは間違いない。
漫画とか小説とかで有り勝ちな異世界トリップ万歳状態で無いのが唯一の救い。
言葉が通じる日本でよかったはよかったのだけど…。



100%時代が違うと見た。



弥鶴が私の額に手を掲げたのは覚えている。
そのあとの記憶が全くない。
一体アノ馬鹿は何をやらかしたんだろうか?
兄妹で無いのはよく分かったし、溺愛しているのもよく分かった。
だけどね…



諦め悪すぎでしょう、弥鶴…。



思わず盛大な溜息をついた。
いや、シスコンぶりからしてちょっとオカシイとは思っていた。
まさか怪異だとは思わなかったよ。
それも契約付きで私を花嫁として迎えに来たって?



私の意見は何処にいったんだ。



0
  • しおりをはさむ
  • 2994
  • 107
/ 286ページ
このページを編集する