怪異と私の恋物語【完】

第三章 過去 /咎人

「一体私の何の恨みがあるんでしょうか、彰泰さん?」

「何をそんなに怒っておるのだ?
約束通り【藤の君】の部屋に案内したであろうに」

「ははは、その【藤の君】が私の目の前に居るのにですか?」

「そなたは【部屋まで案内して欲しい】と言うたではないか。
我はそなたの願いを叶えたまでだ」


どの口が言ってんだ、この俺様がっ!!
ハハハ、まさかこの風呂敷を渡すべき相手が目の前の彰泰さんだったなんて誰が予想出来たでしょうかね?
【藤の君】ってなんだよって話だ。
彰泰さんって名前があるんなら彰泰さんに届けろって女中さん言って下さい。


「何も部屋に上げる事をしなくてもいいんじゃないでしょうか?」

「案内した礼に我の暇つぶしに付きあってはくれぬのか?」


そんな約束した覚えありません。
それに男女2人が一室というのは教育上良くないと思います。
更に付け加えれば、


こんな豪華な部屋でくつろげという方が無理な話でしょう?


目を逸らそうにも視界にどうしても入る程沢山ある値うちが高いであろう装飾品の数々。
一体この人何者なんだ?
っていうか、【藤の君】って何ゆえそう呼ばれてるんだ?


「一応働いている身の上なので、後で先輩女中に文句言われるのは嫌です」

「では臣下に伝言をその女中に頼んでおく。
我の元で少々働いて貰うと言っておけば何も文句は言うまい」


いやいやいや、それ絶対許されないでしょう!?
っていうか、臣下て…どれだけ偉いんだ貴方は!?


「失礼ですが、藤の君様」

「彰泰」

「は?」

「我が名は彰泰と言うたではないか?
その耳は飾りか、馬鹿め」


血管ぶち切れそうなんですが?
ねぇ、お偉いさんか何か知らないけれど殴ってもいい?
私、どちらかといえばおしとやかな性格な筈なのだけれど、殴ってもいい?


「はぁ…とりあえず、これお届けモノです彰泰さん。
お受け取り下さいませ」

「そなたにやる。
置く場所が無い」

「いや、中身すら見ていないのに人にやるっておかしくないですか?」

「どうせ賄賂だ、見る価値もあるまい」


この時代もやはりそういう裏事情があるらしい。
苦々しく包みを見る彰泰さん。
相当嫌な目にあって来たご様子。

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