怪異と私の恋物語【完】

私は未来を知っている。
きっと魁は、この平穏を壊してしまうのだということを。
目の前に居る彰泰さんが生き残るかどうかは定かではない。
だけど、【死】をなんとも思っていない、まるでいつ死んでも構わないとでもいうような彼の目を見てしまった。
余計なお世話だったかも知れない。
けれど、私は言わずにはいられなかった。


本当に、おせっかいな性格だわね。


ポカンと此方を見つめる彰泰さん。
そして、次の瞬間、楽しそうに声を出して笑った。
…一体何処に笑う要素があったんだろうか?


「そ、そなたは…本当に変わっているな。
どうやら我の目は節穴では無かったようだ。
気に入ったぞ、菜舂。
お前にはこの部屋に来れるよう我が計らっておく。
いつでも暇な時に遊びに来るがよい」


優しい、でも何処か泣きそうな表情の彼。
私はその瞳を何処かで見た事がある。
だけど、思いだせない。
あぁ…一体何処で私は見たのだろうか?


「…来れたら、いいですね」


そういうのが精いっぱいだった。
私はきっとそんな優しい彼の言葉を裏切ってしまうだろう。
この時代の人間では無い私はきっといつか消えてしまう。
元の時代にいつかは戻る身。
弥鶴の力で飛ばされた私。

私は、彰泰さんに別れの言葉を告げると、彼は【またな】と再会の言葉を口にした。
そして、襖を閉めた次の瞬間、


私の世界は大きく歪んだ。


世界が暗闇に包まれ、酷い頭痛に襲われる。
誰かの声が聞こえたけれど、確認出来ないまま



意識を手放した。



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