怪異と私の恋物語【完】

第四章 選択肢と決断 /怪異

「のう、小娘…この世で一番罪深いのは何か知っておるか?」

「…殺生じゃないの?
確かに食物連鎖で私達人間も動物を食べたりするけれど、無差別に殺すのが一番罪深いと思う」


そういうと、ハッと鼻で笑う。
カチンと頭に来てしまうのは自然の摂理だと思う。
断じて私は悪くない。


「まぁ、所詮16年しか生きておらん人間の小娘の頭ではその程度じゃろうな。
甘ちゃんも良い所…砂糖菓子のように実に、甘い」

「…すみませんね、人生経験が乏しいものでっ!!」


思わず荒い口調になってしまう。
だが、その反応すらも彼にとっては面白いのか楽しそうに笑う。
手の平で踊らされているようで気持ち悪い。
まるで玩具のように私の反応を見ながら弄んでいる。
実に趣味が悪い。

この会話が成立している中、今も尚壮絶な戦いが繰り広げられている。
酷い爆発音や、咆哮、叫び声、濁音、金属音、エトセトラ…。
もはや私の耳では分別不可能な音の量に頭がグチャグチャだ。

そんな中、何故私達の間で会話が成立しているか。
それは是非とも私も知りたいのだけれど、多分目の前に居る彼のおかげだろう。
【声】が直接頭に響いているような感じだ。
実に気持ちも気分も悪い。



「では、無知な小娘に特別に儂が教えてたもおう。
この世で最も罪深いのは…人の【欲望】よ」



欲望。
欲しがる事。
欲しいと願う事。
不足しているモノを満たそうと望む心。


「人の欲には終わりは無い。
人の欲は、5つの層に分かれていると言われておる。
生理的欲求、安全への欲求、社会的欲求、自我欲求、そして現実実現欲求。
だが、それらは満たされる事は無い…永遠にな」


自嘲気味に笑う彼。
その表情は、何処か悲しそうだった。

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