怪異と私の恋物語【完】

第四章 選択肢と決断 /哀別

ふわりと、一枚の真っ白な羽が私の膝下に舞い落ちる。
震える右手でそっと柔らかなソレを触った。


暖かい。


空いているもう片方の手で彼が触れた額をなぞる。
アノ感触は、嘘じゃない。
目の前に彼は居た。

私の唯一無二の兄妹。
大好きなお兄ちゃん。

起きた時、彼は輝いていた。
ホタルのような暖かい光に包まれていた。
真っ白な翼を持つ彼はまるで天使のようで、私を見て安心したような笑みを見せると、そっと口づけたんだ。


優しく、愛おしげに、私の額に。


茫然とした私を見て、苦笑して…。
いつもみたいな調子づいた笑顔じゃなくて…。
儚い、消えてしまいそうな笑みを浮かべながら、私の頬に触れて…。
それで、こう言ったんだ。



『愛してるよ、菜舂。
‥‥どう、か…幸せに、俺の可愛い花嫁』



それを最後に、一枚の羽根を残して、弥鶴は跡形も無く…。
まるで最初から存在していなかったかのように消えたんだ。
ホタルがバラバラに飛び散るみたいに、光が崩れて…。
そして、消えたんだ…。


白い羽を1本残して。


自分を見る。
赤く染まった、穴のあいた服。
覚えている。
私は、確かに神様に腕で貫かれたんだ。
それで…



死んだんだ。



一瞬の出来事で、理解する間も無く真っ暗な世界に堕ちて。
だけど、弥鶴の声が聞こえて…。
私を呼ぶ声が聞こえて、起きたんだ。
そうしたら、弥鶴は消えかかってて…。


ダメだ、状況がつかめない。

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