怪異と私の恋物語【完】

第一章 主と僕 /理解

「…ぐぁっ」

「死ね、化け狐が」


目の前の光景は何?
血を吐いて、地面が濡れる。
滴る血を辿ればそこには朱利の腹と口元。
殺意の籠った声を辿ればそこには、手を血に汚した魁。

何故こうなった?
どうしてこうなった?
ココは何処?
現実?
夢?

赤い夕陽が私の頭を鈍らせる。
ただ分かっているのは。
朱利が魁によって


殺されかけているということ。


時は、放課後17時。
空は血と同色に染まっていた。

帰宅すべく、校門へと向かおうと朱利の手を取って私達は、帰路に付こうとしていた。
だけど、それは叶うこと無かった。
一瞬にして、世界がモノクロへと変わり。
世界が歪んだかと思うと、下駄箱近辺に居た私たちは、どういう理屈か


屋上に居た。


まだ青かった空は、赤く染まっていて、時間の感覚がおかしくなったのかと、頭がいかれたのかと頭が混乱した。
だけど、隣に立つ朱利は至って冷静で、おまけに溜息までついていた。
その表情は、【またか】とでもいうように
呆れていた。


「主君、また時止めたんですか」


時を…止めた?
そんな事出来るわけがない。
自然の摂理を完璧に無視して決して操る事が出来ないという【時】を止めることはできるはずがない。


「正確には菜舂様とお前を少し先の時間に送っただけです。
その間、面倒な【教師】とやらの職務を真っ当しなければならなかったので」

「どっちも同じですよ。
【神隠し】まで使って…。
一体どうしたんですか、主君?」


【神隠し】?
山とかで行方不明になるっていう?
分からない単語だらけだ…。
本当に怪異って何なんなんだ。
人間じゃないっていうのは確かだけれど


全ての原則を無視してるよ…。


魁は、かけていた眼鏡を上へと放り投げると、次の瞬間


赤い液体が宙を舞っていた。


そして、冒頭に至る。
一体何故、魁がこのような行為に出たのか。
何故、朱利が殺されなければならないのか。
目の前で起こっている【現実】についていけない。
いや、ついていける筈がない。


全てが日常からかけ離れ過ぎているのだから。

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