私の周りは金持ちばかり!?

第一章 出会い /医学界の天才

「嵐のような方でしたね…
まだ此方は名乗って居なかったのに」


苦笑して少女が走った方向を見る。
入学式までまだまだ時間はある。
本来ならば学園に足を運ぶのには早いこの時間。
彼と同じ新入生の姿は何処にも居ない。
だが、彼には早く行かなければならない理由があった。

大抵の入学生は、コネクションを作る事を目標にこの学園に入学する。
彼もその中の一人であり、また、彼が早めに学園に出向いた理由もその【相手】と会う為だった。

彼のような身分の高い身であれば、徒歩で出向く等、本来ならばあり得ないのだが、目立つと後から会わなければならない相手に色々と文句を言われる為、仕方無く近くの公園で専用リムジンを止め徒歩で通学した次第である。

人生初めての徒歩での登校に新鮮味を感じ、桜吹雪を見ながら風流に浸っていた中、不運にも学校に急いでいた風夜と衝突してしまったのである。
生まれて初めて誰かに激しくぶつかった彼は、色んな意味で衝撃を受けた。
勿論身体的な面では勿論ではあるが、精神的な面でもあったのだ。

彼の周りに居た【女】という存在は、そもそも走るような真似はしなかったし、自分を【少年】呼ばわりするような輩は居なかった。
どちらかというと、自分に媚びを売ったり、何とか目に止まろうと裏に欲望を潜めたような者ばかり。
だから、彼女のような天真爛漫で、無垢な少女に出会うのは初めてだった。

自分の仮面のように張り付けた笑顔に対して、心をときめかせる女や、好印象を持つ輩は居たとしても、【幸せ】を感じると声に出して言う者は誰も居なかった。
そもそも、そんな風に思った事もなかった。
自分の笑顔が人を幸せにする?そんな馬鹿馬鹿しいと、普段の自分なら一蹴りしていただろうが、何故か彼女の言葉は素直に心に馴染み溶けて行った。
本当に不思議だった。

同じ学園で、しかも年上だというのに、あの落ち着きの無さには少々呆れる所があるが、それは別に気にならない。
寧ろそんな彼女に対して好感を抱いた。

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