Street black cat Ⅲ【完】




「潰されるぞ、あいつに。それにお前の子供なんて御免だ」

「ヒドイな!まあ確かに潰されるよネ」

「何で笑う」

「・・・いや、優しい子だヨ、ほんとに。キミは」




ハア?と睨めば、村吉は苦笑して私の手をぽんぽん叩いた。



その叩いた手で今度は、立派な腹をポンッと叩き、「じゃあもう頭突きはしないこと!」と言いながら席を立った。



パタパタスリッパの音を立てながら、ドアへ歩いてく丸っこい身体。




・・・優しいから、巻き込めない。



私なんかを養子(ムスメ)にしたって、結果は目に見えてる。




他人の私をこんなにも想ってくれる大人は、村吉ぐらいだろう。きっと目の前に知らない子供が沢山いても、全員を助けようと手を差し延べる。そんな大人だ。




他にも村吉を待ってる人がいる。そんな人間を巻き込めないし、巻き込みたくない。




「村吉恭になりたくなったら電話しておいでヨ。娘としてビシバシ、一から言葉遣いを教育してやるカラ」

「お前の子供なんてヘドが出る」

「はは、睡眠薬、水なしで飲ませるぞガキ」

「やってみろメタボ」




最後の最後まで睨み合っていれば、村吉がふっと柔らかく笑ってドアを閉めた。




入れ違いで悠が入って来る。後ろからぞろぞろと個性的な面々が続いているのが見えた。




「お医者様と何かお話でもなさっていたんですの?」



村吉が去っていったところを見ながら不思議そうに悠が尋ねた。



「何でですか」

「お医者様が笑ってらしたから、そうかと思って」

「へえ」




私は痛まない程度にユルユル首を振って、枕に頭を埋めた。













「ただの世間話です」





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