Street black cat Ⅲ【完】





ガッチゴチに固まった雅樹は右手と右足を一緒に出して歩きだすという珍技を披露しながら、私の側の椅子へ近付いていく。




先程村吉が座っていた椅子だ。



雅樹が座ればその圧迫感の少なさから、いかに村吉が丸っこくデカイのかが分かる。




窓からはいる風がモヒカンを揺らす。私を前にモジモジする雅樹は、やっぱり可愛いと思う。



ずるい。何で目を泳がすだけで可愛く見えるんだ。ありかそれ。




「・・・離れようと思ってるっす」

「ああ」




椅子に座ることによりベッドで上半身を起こす私と同じ目線の高さになっているのに、雅樹はどういう技を使っているのか上目遣いで伺うように見上げて来る。




私がやったらただの睨みにしかならないのに、なんでだろう。




「・・・聞いてるっすかっ?」

「あ、うん」

「絶対聞いてなかったっすよねっ?」

「聞いた。ばっちりだ」




聖二だったら鉄拳が降るであろうやり取りも雅樹なら許せる。やはり私は可愛いものに弱いらしい。




内心苦笑しながら、目を細める。




風に乗って雅樹が持ってきたマフィンの匂いがした。




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