Street black cat Ⅲ【完】

第11章:野良黒猫、寝る /お礼≠お金





もう早いことにイルミネーションも目立ち始め、ちょっとだけ気分が向上する時期がやってきた。




「・・・さむ」




だけど、買い物に行けば思わず寒さで衝動買いしてしまうマフラーが、急激に家に増えたことが少し悩みのこの頃。



ソファーでクッションに抱き着きながら呟いたその一言に、少し離れたところにいたはずの杉田に届いてしまっていたらしい。



苦笑しながら「そんなに寒い?」と聞いてきた。




完全なる独り言を聞かれて少し気まずい私の心情を省みず、杉田は更に「ねえ、寒い?」と、また聞いてきた。うざい。



でも自分が冷え症や寒がりである自覚はあるため、渋々頷く。




だって寒い。



暖房だって入っているのだが、床の冷たさや暖房のついていない廊下のひんやりとした空気はもうあれは終わりだな。終わってる。最悪極まりない。




青メッシュを爽やかに揺らしながら寒さに不機嫌になる私を笑った杉田は、「ってよ、飼い主」と不良達が群がるそこへ声をかけた。




「あ?なんか修一言ったか、ってお前な、馬鹿言うんじゃねえよ『マフラーで寒そうに顔を埋める』のがいいんだろうが」

「俺は断然『コートから覗く指を擦り合わせる』のがイイじゃないですか!」

「ちげえよ馬鹿!『ちょっと脱ぎにくいブーツを脱ぐとき』がいいんだよ!」

「ブーツといえば『ブーツに覆われてない足を擦り合わせる』のってよくないですか?」

「阿呆、そこにエロを求めるな」

「重要なのは恥じらいと慎ましさだ」




仲良く『冬場で萌える女性の動作』を語り合っているらしい。凄く気持ち悪い。



マフラーを使った動作がお好きらしい高杉十悟はこちらに歩いてきてすぐに、私のオレンジジュースを飲みやがった。



即座に蹴ったけどふにゃりと避けられた。むかついた。




「で?なんて?」

「恭が寒いって震えてる。可哀相だよ」

「あらー震えてるのか」


「震えてねえよ」


「そっかそっかー。うちのキティーは繊細だからな。可哀相に」


「キティー言うなアホ」




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