まさか、これは
千載一遇のチャンスってやつか!…なんてな。
サナちゃんを疑うわけじゃないが、”あの”神代が浮気なんてするはずがない。
サナちゃんが記憶を失い、神代の元を離れてる間、女の気配なんか少しも無かった。
「ホントに?」
「女と抱き合ってた…」
サナちゃんの説明からすると、”抱き合ってた”というより隙を突かれて、抱きつかれただけっぽいけどな。
肩に手を置いて引き離そうとしてる時に、タイミング悪くサナちゃんが現れたんだろう。
「浮気した旦那なんか捨てて、俺にする?」
「えっ…」
「なーんてっ。サナちゃんの旦那はサナちゃんにしか興味ないよ、それに…ママが、そんな顔してたら子供達もお腹の子も不安になるよ?」
少しだけ、ふっくらしてるサナちゃんのお腹を、俺は指差した。
きっと今頃、神代は身重のサナちゃんを血眼で探し回ってる事だろう。
「サナさんっ!」
俺達に近づく1人の女性。シグレ兄の嫁さんになったアンナさんだ。
「キョーヤ…ありがと」
「友達として当たり前の事しただけっ、あー、でもヤクザが友達とか迷惑かっ」
「もぉ!キョーヤはキョーヤだよっ。ずっと大事な友達だよ?」
俺達の元に着いたアンナさんと少しだけ2人で話した。アンナさんも俺と同じ考えだったが「隙を作った神代が悪い、少し懲らしめてやるわっ」と悪戯っ子みたいな表情を向け、サナちゃんを連れて行った。
後のことはシグレ兄とアンナさんに任せよう。
2人の背中が見えなくなるまで見送り、俺はハジメ兄のいる本家へ急いだ。
「オシベ ハナ…オシベ、、、女なのに…」
いや、ハジメ兄?そのオシベじゃ無くね?
「…まぁ、いいだろ。他の借金は肩代わりして1本化しろ、店は今日から出勤させて指導役にはエリナを付けるよう店長に言っとけ」
「はい」
「キョウヤ、目、離すなよ?稼いだ金、また貢がれちゃ堪んねぇからな」
「はい」
「使えそうか?」
「愛嬌は、そこそこって感じですね、あとは思ったことを、すぐ口にするタイプです」
「問題だな、まぁ店長とエリナには気をつけて見るように言っとけ」
エリナは、そこそこ長く働いてるキャストで、最近ではナンバー入りを定着させてる実力があり
容姿も然ることながら、トークや気遣いといった点で定評があるキャストの1人で、他のキャストからの人気も高い。
だが、ここで問題が起きた。
「ヤダ」
「は?」
「キャバ嬢なんて、できない!」
「なら風俗で、知らない男の○○○咥えるかぁっ?」
「だから、ムリっ!」
ってく、何だってんだよ、この女…ワガママ言える立場かよ。折角こっちが安牌な道作ってやってんのに。
「エリナって女、ヤダ」
「あ?」
「琉羽久と仲いいんだもん」
ルークって誰じゃボケっ!
第2部①へ続く