純情ロマンチックヒーロー【完】 

 私はオーケストラの演奏を聴きながら紺野くんの事を考えていた。

すっと伸びた首筋に形のいい頭と、広い肩と少し意地悪な口で優しく笑う。


そういえば、紺野くんは箸の使い方がすごく綺麗だった。


 お父さんがお堅い仕事だと言っていたからお家はきっと厳しくて、きちんと育てられたのだろう。

それゆえに暴力的な事を受けることも多かったのだろうか?


 彼が受けてきた暴力がどんなものなのかは知らないし解らないけれど、家にもいたくないような状況だったのはわかる。


お堅い仕事とは、どんなものがあるだろうか……公務員……教師・医師・議員なんていうセンセイとか呼ばれる職業が浮んだ。


そんな事を考えているうちに終わってしまった。


 ママと楽屋に挨拶に行って、ふたりで一足先にホテルのレストランに向かう。


ママはスリッドの入った素敵な深い緑色のドレスで、私は黒字に薄桃色のバタフライが書かれているワンピースを着ていた。

 短い髪には意外とワンピースが似合うものだ。

大きなピアスや存在感のあるネックレスもしっかりとハマる。

髪が長いと、髪が自己主張をしすぎることがあるんだと前にママが言っていたことがある。

 服を際立たせたい時はヘアスタイルはコンパクトにするんだなんて言ってたけれど、私の髪型ならどんな服だって着こなせるような気がしていた。


 そしてこんな格好をしている今なら、フランス映画のヒロインみたいに素敵に笑えるかもしれない。
そんな風に思った。

 紺野くんに会いたい。
 紺野くんのイジワルに笑った顔が見たい。

私は、彼のことばかり考えていたのだった。


0
  • しおりをはさむ
  • 1708
  • 5777
/ 211ページ
このページを編集する